日本ではまだまだ馴染の薄い「ヴィーガン」という言葉。一方、欧米などではヴィーガン食品がスーパーに並んでいたり、飲食店でも対応メニューが提供されていたりと取り組みが進んでいます。今回は、ヴィーガンの定義やベジタリアンとの違いについて紹介します。
◇ヴィーガンとは?
ヴィーガン(ビーガン)とは、肉や魚、卵や牛乳などの動物性の食品を避け、野菜や豆腐・ナッツなどの植物性の食品を中心とした食生活を実践する『完全菜食主義』を表す言葉です。厳格なヴィーガンを実践する人は、精製された白砂糖、はちみつや保存料、化学調味料や添加物も一切摂りません。ヴィーガンの考え方の根底には『すべての動物の命を尊重する』という精神があるため、毛皮や皮製品は身につけない、動物実験が行われた日用品を使わない人もいます。
◇ヴィーガンとベジタリアンの違い
ヴィーガンは、「ベジタリアン」という言葉から派生して生まれた言葉です。「ベジタリアン」も、動物性の食品を避け植物性の食品を選ぶという点はヴィーガンと同じです。ただし、ベジタリアンの場合は、「卵や乳製品、はちみつなどの副産物は食べる」「肉はNGだが、魚はOK」など、動物性の食品を口にすることもあります。
◇ヴィーガンである理由とは?
動物性の食品を一切口にしないヴィーガンですが、どのような理由からそのライフスタイルは選択されるのでしょうか。今回はヴィーガンを選ぶ理由としてよく挙げられる、3つの背景を紹介します。
●動物愛護のため
食肉を食べたり、動物の毛皮を着ることについて、動物愛護の観点からそれらの行動を避け、ビーガンを選択する人がいます。畜産業などにおいて、狭い畜舎の中で一生を終える動物が、残念ながら無数に存在します。食用・衣料用・その他の目的のために動物を搾取したり苦しめたりすることを、できる限りやめようとする生き方の1つとして、ヴィーガンの実践が挙げられます。
●環境保護のため
牛や豚、鶏などの家畜を育てるには広い放牧地が必要となるため、森林伐採が行われる場合も。この森林伐採で、生息地が破壊されることで、さまざまな動物たちが絶滅に追いやられることを防ぎたいという思いから、ヴィーガンを選択する人がいます。また、食生活に関連した温室効果ガスの排出量は、肉類の消費が最も多いとされ、豚肉の場合は、飼育から店頭に並ぶまでに「1キロ当たり約11.1キロのCO2が排出」されることに。そのため、加速する地球温暖化を食い止めたいという思いから、ヴィーガンを選択する人も増えてきています。
出典:バカにできない?肉の生産で出る温室効果ガス|東京新聞
●健康維持のため
植物中心の食生活を送ることで、生活習慣病である糖尿病や高血圧、悪性腫瘍などの病気の予防に効果があると考えられているため、ヴィーガンを選ぶ人もいます。さらに、近年の動物性食品の量を減らすことで、アルツハイマー病の発症リスクを低下させるという研究も発表されています。
出典:アルツハイマー病の悪性化に関わるタンパク質の発見|理化学研究所
◇ヴィーガンは動物や人間を含めた地球全体の幸福を求めるものです
今回は、ヴィーガンの定義やベジタリアンとの違いについて紹介しました。「動物性タンパク質を一切摂らない」と聞くと、我慢を強いられた過酷な食生活をイメージするかもしれません。しかし最近では、大豆を使用した大豆ミートや、牛乳の代わりになるアーモンドミルクなど、動物性タンパク質の代替品となる食品も誕生しており、今後も広がりを見せる見込みです。「今日はお肉のかわりに高野豆腐を使ってみようかな」と、まずは気軽な気持ちで植物性の食事を試してみてはいかがでしょうか。
次回、「【第2話】ヴィーガンは日本人に馴染が深い」では、日本におけるヴィーガンの歴史と日本食との関係について紹介します。